乱あんど癌

色んな意味で乱れたおっさんと、突然現れた派手な膀胱癌。RUN&GUN 速攻。常に攻守交替。先生、バスケもしたいし、あんなことやこんなこともしたいです。

最終話 1リットルが1キログラムなのは、水の比重を1とした時である。

 こんにちは。

 

僕は改造人間になった。

 

仮面ライダーのような超人的な力を手に入れたわけでもなく

COBRAサイボーグ009のように身体の一部が武器になるわけでもない

ましてや、銃夢ガリィやワンパンマンのジェノスのようにカッコよくもない

 

背中の右下、腎臓部分より

管を通して排尿できる

 

僕が得た能力はこれだ。

 

攻撃能力はない。

 

腎臓部や排尿してる管を攻撃されたら、終わりだ

 

僕は改造人間になった。

これは間違いない。

 

世界の平和は俺が守る。

 

ある日、西新宿に突然生まれた正義のヒーローのお話

はじまります。

 

王の帰還

考えてみれば

車椅子に乗って押される

っていうのも初体験じゃないか。

 

背中の痛みに耐えながら

そう思った。

車椅子の右側にぶら下がった

背中から繋がる尿バッグの中身は血だらけだった。

そりゃそうだ

あれだけ痛かったんだから

 

病室では、色々な手続きを終えた妻が待っていた。

 

車椅子に乗る憔悴した旦那

そして横にぶらさがる血まみれの袋

 

ぎょっとした顔をした。

そりゃそうだ

 

心配させまいと笑顔で旅立った旦那が

どう考えても、敗北したオーラを漂わせ、さらに改造人間にされて帰ってきたのだから。

 

初物尽くし

初入院

初膀胱鏡

初腎臓処置

初車椅子

初改造人間

 

この、たった1時間半くらいの間に、こんなに初体験することってあるだろうか。

 

夜、これまた初の病院食を食べ、意外に美味しいこと。

思った以上に病室が快適なこと。

たくさんの初体験ができたこと。

看護師の皆さんが良い人っぽいこと。

 

いやーこれも良い経験だな。

なんて考えていた。

 

突然の癌宣告と、突然の入院。

家族のこと、仕事のこと、未来のこと。

考えなくてはいけないことが山ほどあるという状況で

 

布団もフカフカだなぁ~

なんてゴロゴロしているうちに

 

その日は良く寝れた

 

ダイエット

腎臓に管を入れたことで、溜まっていた水分が一気に排出され

脱水症状になる可能性もあるため

水分を点滴された。

さらに、できるだけたくさん水分を摂るようにも指示された。

 

処置後

一晩で3リッター近くの水を飲んだ

 

尿バッグは点滴棒下部に引っ掛けてあり、満タンで2,500ccまで溜められる

腎臓処置をしてから、数時間毎に看護師さんが尿の量を計り捨てに来てくれる。

 

一晩で

10リッターの尿が出た。

 

次の日

鏡に映った自分は別人だった

 

太ったと思っていた部分は全て

排出されず体内に蓄積された水分だったということだ。

オソロシイ

 

10リッター=10キログラム

 

摂取した水分を考慮しても

一晩で5キロくらいは減ったんじゃないか。

 

それくらい

鏡に映る自分は別人だった

 

おいおい

よく見たら自分、男前やないかーい!!

 

誰も言ってくれないセリフを

心の中で、惜しみなく鏡の向こうの自分に送ってやった。

 

CT検査、MRI検査、X線検査、肺活量?なんやらなんやら

数日かけて、たくさんの検査をした。

 

今回はとりあえず検査中心の入院ということもあり、入院期間は1週間。

22日の月曜日に退院予定だった

 

20日の土曜日、妻と長男がお見舞いに来るということで外出許可をもらった。

ランチして、買い物して、ブラブラして~

 

病院に戻り

 

熱が出た。

 

腎臓の炎症が原因だった

 

木曜夜くらいから、なんとなく違和感があった。

 

看護師さんや先生には伝えていたのだが、大丈夫とのことだった。

 

日曜から40度オーバーの熱が3日ほど続いたおかげで

もちろん退院できるわけもなく。

 

結局、4月の30日

 

僕の記念すべき初入院は、平成とともに幕を閉じた。

 

ちなみに

40度オーバーの熱が3日以上続いたのも人生初なんだと思う。

 

はじめてのにゅういん~完~